アーティスト図鑑

Chanty 芥のこと

芥【あくた】
シャンティー・ソアンプロジェクトウィズアクタのボーカリスト。
「長野県小海町が生んだ声量オバケ」の異名でシーンに広く知られている。

甲信越きってのセンチメンタル屋であり、人が人として生きていくうえで一度は経験するであろう「なんで上手くいかない!」「どうして自分ばっかり!」「違う!私が言いたいのはそういうことじゃない!」といったヤキモキ感情を他の人には真似のできない独特な言い回しで巧みに表現する苦悩の名手。
特に詩の上でやきもちを焼かせたら彼の右に出る者はおらず、「人間のちいささ」を勇ましい声で歌い上げるというギャップも無二そのもの。
難しい言葉や英詩を一切使わず、シンプルな日本語を積み木遊びのように愉快に組み上げ、様々な単語の並べ方で無限の表現を成す様はお見事。
活動初期は、上手く生きられない人間の有り様を痛快に描き、おどけた調子で皮肉たっぷりに歌い上げていたが、昨今は「暗」の方面を深く掘り下げた表現力の成長が目覚ましく、必殺の「やきもち」がときに「怨み」とも取れるほどのおぞましさを孕むことも少なくない。

永遠に落下することのないライナー性のド声量と、囁くような優しい歌声との緩急にくわえ、人の声とは思えぬ背筋が凍るような超強烈ファルセットを武器とし、作品を重ねるごとにひとつまたひとつと新しい技が増えていく様も非常に魅力的である。
太い声質&のびのびとした余裕の歌唱によってつい騙されてしまいがちだが、とにもかくにも主旋律のキーが鬼高く、男性はおろか女性ですら厳しいレベルのハイキーをも感情たっぷりに歌い上げる様は、生で目撃するたびに褪せぬ驚きを与えてくれる。
客席を煽るがなり声よりも歌っているときの方が遥かに声が大きいのも特異点のひとつだ。

また、ライヴにおいて時折とんでもないスイッチが入り、完全に音の世界にのめりこんだまま帰って来なくなる通称「芥不在現象」がしばしば発生する。
その憑依ぶりたるや、そこに居合わせた者の心のザワめきが音として聞こえてくるほどで、もはや怪奇現象にすら思える。

ステージをひとたび降りると、こちらが恐縮し尽くしてしまう程の腰の低さを発揮し、その丁寧極まる人柄から滲み出る隠し切れない「人見知り感」がなんとも愛らしい好青年である。
オンオフのあまりの落差から「ほんもののあくた」探しに迷宮入りする関係者も少なくない。その小柄な体から放出されているとはおよそ信じ難い驚異的な声量の持ち主といった点で、株式会社メルヘンの代表取締役 植松景夕と深く通ずることから、彼らの前世は同じ森に住む蝉だったのではないかと言われている。ごめん、それは嘘。

用例:「餅は餅屋。やきもちは━屋」