レビュー記事

アンフィル『パロニリア』

いつの時代もそうだった。
世に点在するバンギャルズは基本、メルヘン・ホラー・ファンタジーの三要素にしこたま弱い。
それを見透かしてか、はたまた単なる偶然か、その非現実的三要素を過積載級に詰め込み、こちらの弱点をこれでもかと突きまくる邪悪戦隊。その名は『パロニリア』。
この歌から始まる既視感皆無のメンタルブレイクストーリーをとくとご覧アンフィル!

ここに描かれているのは、死別によって切り離された一組の男女。
地上に残してきた恋人を空から見守る男の姿を綴った短編小説のような物語です。
「よくあるお涙頂戴系のバラード?」なんて問われようものなら「大不正解!な上に、むしろその真逆!」と、その疑問符をへし折って差し上げましょう。
というのも、彼が雲間から覗き込んだ「自分のいない世界」で生きる彼女の隣には、既に見覚えのない影が並んでいたのです。
とはいえ、心から愛していた彼女のことですから、幸せでいてくれるのは本来喜ばしいことであり、「彼女を見守る」という本来の目的は果たすことができたかの様に思えたのです…が…
そこは女性の想像を遥かに絶する嫉妬心の塊「男」!
「見守る」よりも「監視する」に近い彼の眼光は実に鋭いものでした。

視界をぐにゃりと曲げる不穏なサウンドにまみれながら、彼はその目で見ている現実を受け入れようとはしません。
もう声は届かないことを知りながら、この悪夢が覚めてほしいばかりに生気のない『おはよう』を彼女に向けて幾度呟くも、それが虚しい悪足掻きでしかないことを当たり前に理解している彼は、孤独と嫉妬に蝕まれた声で続けざまに『此れは夢じゃない…?』と、これまた呪文の様なうわ言を繰り返します。
焦点の定まらぬその冷えきった声には狂気さえ垣間見え、それが紛れもない現実であることを自身に強く言い聞かせている様。
自傷行為といっても過言ではないこのシーンの痛切さは、他に類を見ません。

こんな境遇ともあらば、恨み言のひとつでも唱えそうなものですが、不思議と彼からはその類の邪念が感じられず、これまで経験したことのない憂鬱との遭遇にただただ戸惑っている様子が見受けられます。
理解が追い付かず、追いつこうともしない。
報われることもなく、その後の顛末も知らされないまま、闇色の重たい雲が彼の視界を塞ぎ、『パロニリア』の世界は幕を閉じます。

そして、次作『Step bye step』は残された彼女の視点から描かれたもうひとつの物語。
手の届かぬ距離にありながら、同じ時間軸に重なる二つのストーリーを前に、我々は彼の抱える憔悴の念に大きな誤解があることを知らされるのです。