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DEZERT 肋骨新聞『「最高の食卓」』

CA104P型頭痛大流行

一昨年、鬱屈した感情を器用に排泄出来ない現代人を中心に流行した「新型嘔吐」。
日本各地のドラッグストアからエチケット袋が姿を消した「エチケットショック」が記憶に新しいが、そんな危機から人々を救った某団体のことを覚えているだろうか。
未だ組織名は明かされないままだが、彼らの開発した新薬「なし」はまさに時代の救世主ともいえる存在だった。

そして今、新型嘔吐の再来とも恐れられている感染病「CA104P型頭痛」が東京渋谷区内で大流行している。
体内潜伏期間の極端な短さが特徴で、感染した者は昼夜問わず頭を抱えながら延々こう呟きつづけるという。

「シーエーイチマルヨンピーってなんだろうシーエーイチマルよんぴーってなんだろうしーえー…」

これを受け、医師会は例の団体に新薬開発を命じたが音沙汰なし。
とある著名な薬学者がこの病の感染源は彼らなのではないかという説を唱えているが、彼らに救われた多くの人々はそれを否定している。

 

ーーーダァレが泣かした肋骨乙女コラムーーー

一年数ヶ月ぶり。
待っていることさえ忘れてしまうほどに待ち続けた愉快な最新作を迎えようというときにこんなぼやきはどうかと思うんだけども。
でも、唇からだらだら溢れて止まらないんだから仕方がないのかも。
まぁ遠目で見てもうんざりするこの文字数だ。
わざわざ指をスイスイスクロールしてまで熱心に読もうとする奇人ちゃんなんてあなた以外にそう多くはいないことだろうし、ここはひとつ、好きなだけ…

ネェ!「表現性豊か」を自負する日本語とやらは少々自己評価が高過ぎやしないか。
「十人十色」ってのもそうだ。実際のところ、ヒトなんてのはそんな様々じゃあない。人間を買い被り過ぎだよ御局さん!
何をそんなに息巻いてって、だってだって同じモノに触れた誰もがこうも同じコトばかり口にするんだもの。
そうかそうか、卑猥になじれば規制か。オブラートに包まなきゃグロテスクか。ダークで陰鬱なら九十年代を彷彿とさせちゃうか。言葉に詰まれば伝家の宝刀「世界観様」のオナーリーか。文字数足りなきゃ「今後も彼らから目を離せない。」の参上か。
へぇ本当に?目離してない?今も?まぁいいか。

そうそう。誰も信じちゃくれないが、その昔三分三十六畳の狭い部屋に閉じ込められた肋骨少女と呼ばれる女の子に遭遇したことがある。
彼女はとても変わった感性で生きており、「大好きな隣人の彼に子宮を食べてもらえた。痛かったけどとても幸せだった。」と涙ながら嬉しそうに私に話してくれた。
理解に苦しむこちらのことなどお構いなしに、続けて実の父親から受けた暴行について語りはじめたのだ。
なんでも、父は彼女の肋骨をこじあけようとドリルを手に取り、身が焼ける程の回転数でその華奢な身体を抉ったのだという。
父から受けた痛みからは最愛の彼に覚えた愛情の類を感じず、ただただ痛いだけだったと声を詰まらせる彼女の姿には酷く胸を締め付けられたものだ。
徐々に食べられる部位が減っていき、見る見る醜くなっていく肉体をないがしろにしはじめた彼に耐え難い寂しさを感じた彼女はボロボロの身体でこう叫んだそうだ。
「まだ見捨てないで。一番美味しいところを肋骨の裏に隠しているの!」と。

そこから先の話は覚えていない。
こんなにも非現実的な話を耳にしながら、私という奴は私自身が感じた矛盾と向き合うのに必死になっていたのである。
というのも、耳を塞ぎたくなる様なカニバリズムを経験しながら、彼女の四肢には欠損がひとつとして見当たらず、表情も仕草も健全そのものだったのだ。
玄関口まで送り出してくれた彼女に手を振り、私は駅までの道を歩いた。
そして、最寄駅に着くより先にある結論めいた考察に辿り着くのである。

「あれは彼女なりの愛情表現であり、比喩でもしなければ言葉が追い付けないほどの純粋な恋の物語だったのかもしれない」と。

誰ひとりとして心から憎めず、すべてを愛してしまう不器用な彼女の失恋。
大好きな彼をもう一度振り向かせるために有りもしない「すごいもの」をチラつかせ興味を引こうとする姿はなんとも愛らしいものがあるし、仮に隠されていたものがあったとしたならそれは頬を赤らめた「恋心」に他ならない。
その足で彼女の部屋に戻り、「こうなんでしょ?」と答え合わせを迫っても良かったのだが、私もいい大人だ。いたいけなお嬢さんをひやかす様な真似はしない。
それに、もしも不正解だったとしたら本当に怖いしネ…

それから十ヶ月が経過した頃だったろうか、
デザートというバンドが手掛けたタイトルをもたない不気味な円盤のなかで私は彼女の近況を知ることになる。
どうやら私のあとに同じ体験談を聞いた記者がそれを「グロテスクで刺激的で、まるで昔のヴィジュアル系バンドが歌っていた唄みたいだねえ。」と笑ったらしい。
その言葉に傷付いた彼女の胸中。想像するだけで今でも胸が痛むのだ。
なんて、知った顔で好き勝手喋っていると千秋様特製ミルクの餌食になりかねないのでこの辺にしておこう。

らしさも世界観も知らない。
このバンドの、この作品の何が良いのか。
楽曲と演奏・詩・歌声の素晴らしさ。
私はそれがすべてだと思っている。

あざちゃん
あざちゃん
以上で「最高の食卓」版はおしまいです。
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