制作

LIPHLICH TIMES 創刊号『STUMP+』

呼んだコチラが悪いのか 呼ばせたアチラが悪いのか

己の手を汚さずして人の鼓膜に気体性媚薬を注ぐ完全犯罪集団リフリッチ。
世の脅威とされる彼らから昨夜未明、政府宛に一通の犯行声明文が届いた。

「ヒトビトの好奇心を弄んだ過去幾多に及ぶ前科をまとめた二枚組の摩訶不思議な円盤。其れを世に放つ。」

声明内容はこの通りであり、これが真ならば実に現世三度目の襲来となる。
知らせを聞いた民衆はみな震えあがり肩を竦めたが、どういうわけかその口元は緩み、「まるで迫りくる恐怖を歓迎しているかの様にも見えた」と現場の記者たちは口々に伝えた。
しかし、メディアの住人誰もがこの恐ろしい犯行予告と、それに対し妙な反応を示す民衆の姿を「異常事態」とは報じられずにいる。
何故なら、かくいう彼らもまた民衆と同じ、鮮やかなる再犯を秘かに待ち焦がれている一人だからだ。

リフリッチの存在を知らず、この一文に不謹慎だと唾を吐く者がいるのであれば良い機会。一つ告げておこう。君もいずれは知ってしまう。そして、幾度も渇望するのだ。
自身に降りかかる不幸さえも蜜の味に感じさせられてしまう憎き高揚と悲哀に満ちた愛すべき惨劇、その続きを─

———コラム「たからもの」(中段文章)———

宝物。
例えばそれは出逢い、思い出、品物であったり、素晴らしい芸術であったり。
人間は一度愛したそれらをいつまでも信じ、心のなかで無意識に「永遠」を誓ってしまう生き物です。
しかし、「人」と「宝物」との未来が穏やかに微笑ましい温度を保ったまま永続的に続くなんてことは極めて奇跡的で、その確率たるや雀の涙ほどもないことなど、きっとどなた様も身をもって御承知のことでしょう。

人が宝物を失うとき。
それは、なにも「どちらかが形を成さなくなったとき」だけを指すのではなく、その宝物をあなたが「心から愛せなくなったとき」でもあります。
手に入れたばかりの頃は毎日のように触れていた玩具に飽きはじめてしまっていることを知った幼少期の午後。
大好きな音楽が徐々に感性から離れていき、昔の様な愛情を感じなくなっている自分に気付いてしまった日のこと。
そこに生まれる耐えがたい虚無感、切なさと焦りの一度や二度、みなさまにも覚えがあるのではないでしょうか。

ずっと好きでいたい。
けれど、その願いとは裏腹に想いは沈静の一途を辿っている。
そして、いつしか空っぽな「好き」を幾度も呟くのです。そう、まるで自身を騙すかの様に。

前述の通り、80やそこらの生涯で永遠を約束できるものになんてそうそう出逢えるものではございませんが、あなた様の永遠に繋がるかもしれない。その確率が極めて高い気がしてならない。いや、そうでなくちゃ困る!と、そんな勝手をこの耐水性ゼロな紙が破れる勢いでお伝えしたくてしょーーーがないアーティストがいます。バンド名こそ内緒ですが。
そして、その音楽家を知るにこれ以上ないスペシャルアイテムが発売されたのです。作品名も内緒ですが。

聴き手のみならず作り手をも飽きさせない魔性の原曲を磨きあげ、新たな息を吹き込んだベスト of ベストな一枚。
イヤに腹持ちの良い極上の使い捨て音楽に触れてしまったあなた様を連れ去る陶酔経由溺愛行きの片道列車を私たちはここでお見送りしましょう。
そうそう、御唄係を担う21世紀の奇才は発車前に決まってこうアナウンスするそうな。

「お嬢さん、まずは浮気から始めてみませんか?」と。

あぁこれはおそろしい…どうぞご無事で…