制作

LIPHLICH TIMES 3『SKAM LIFE』

四つの罪人
美貌犯S:進藤渉は、美への探究心から馬油を欲しすぎたあまり、世に慢性的な馬不足をもたらした。
よって、自らの手で「愛すべき三人の共謀者から性剥奪」の刑に処す。
刑期は8月1・2日。原則、此処から徒歩圏内の会場で執行すること。

知能犯K:久我新悟は、前世で神のドエライ弱みを握ったのをいいことに現世において無比の才能を授かった。
よって、「男だらけのライヴハウスで150分間ラブソング独唱」の刑に処す。
公演の模様は映像化し、後日ゆうパックで神に郵送すること。

強奪犯A:新井崇之は、撥弦楽器を武器に寡黙で勤勉な人々から理性を根こそぎ奪い尽くした。
よって、「どれだけ大物になっても変わることなくGuitar Kids DVDをZEAL LINKのオリジナル特典として提供しつづける」の刑に処す。

可憐犯M:丸山英紀は、常用漢字の不得手(ふえて)さえも甘味(かんみ)に思わせる非常識的な愛らしさをふりまくことで、日本中の女性に生きる自信を失わせた。
よって……検討する。

———コラム「正直者の逃走劇」———

文字通りSKAM(詐欺)のサラブレッドたちが一堂に会したこの集団に「安全」なんて求めちゃ馬鹿を見る。
だいたいが可笑しいのだ。言葉巧みに人様の心を手玉に取ること、それを生業とするアノ四人が今になって改めて「ペテンをしましょう」だなんて。
言うなればこれは「僕、首長いんですよね。」とほざくキリン、ないしは「物を盗みに来ました。怪しい者ではございません。」と一礼してから玄関で靴を脱ぐ泥棒とそう変わらない。

つまり、彼らにとっての「SKAM LIFE」とは単なる「私生活」に過ぎないである。
が、どういう風の吹き回しか、彼らは妙にかしこまった様子で本作に収めた5つの嘘を自ら白状してみせた。
非常に感動的な自白ではあるが肝心な「その嘘が何だったのか」を明かさないことで世間を更なる混乱の渦へ誘う。
それどころか『ペテン師の白状なんて信用するもんじゃありませんぜ』などと私たちをからかい、五線譜の上をピョンピョンおどけ飛び回る始末だ。
いやはや、今回の件で彼らの懸賞金がどこまで跳ね上がるのか、実にミモノである。

おっかなびっくりでありながら好奇心に逆らえない人間の愚かな表情が大好物で、その欲しがりな眼差しを前にすると思わず口角がプカリプカリと浮いてしまう世にも卑しい首謀者 久我新悟(from Kawasaki City)。とはいえ、詐欺師も聖職者も凡人もヒトはヒトだ。
きっと誰もが平等に不安で、同じだけの憂鬱を抱えている。
というのも、彼はただ闇雲に嘘を重ねているわけではなく、言葉にはしないながらもこの短編劇を通してこちらにとある一つの疑問を呈し、なにかの確認を試みているかの様に思えるのだ。

「己の欲求を見透かされる様ではペテン師の名が廃る」しかし、5つの嘘探しに私たちを没頭させた理由はおそらくそれだけではない。
ジェノベーゼ片手にちょいと歪んだ求愛を嗜む彼は自身が蒔いたとする嘘を懸命に探し回る私たちの姿に、己へのこれ以上ない愛情を感じているのだろう(変態)。

「見付けた!」と誇らしげに嘘を掲げる者。
「もう分かんない!」と、嘆きくたびれ空を見上げる者。
私見ではあるが、そんな疑い深くも無垢で無邪気な私たちに彼が投げかける問いはこうだ。

「さて、この期に及んで君は一体誰を信じる?誰と居たい?何を欲しがる?何処へ行きたい?」

それらに対する全ての答えが「LIPHLICH」であることを誰よりも強く願っているのはきっと彼自身なのだろう。
分かっていながらも確かめたくなる。幸せな今にほど不安を覚える。
これらはそう珍しい感情ではないはずだ。

いやしかし、「嘘吐きによる疑心暗鬼ちゃんの為のライアーゲーム」なんちゅう偏屈な遊戯にお金を払ってまで参加しようだなんて、「ウェンディ」という生命体は彼に似て実に不可解な思考と嗜好をしておられる(変態Ⅱ)。
「嘘には真実よりも澄んだ願いと愛が内包されていることもある」それを証明する次曲『聖俗街』で「ペテン師の憂鬱」を目撃してしまったあなたが彼に失望し、その手を振りほどく様な冷たい心の持ち主でないことを知っているからこそ、彼は初めてここまでの本心を唄に綴ったのだろう。
信頼によって勝ち得た「ひねくれペテン師の純粋なる弱音」。守るべき大切な宝物として胸に仕舞っておきたいものだ。

正直に申し上げよう。私は、三号に渡るこの堅苦しい文調にいよいよ限界を感じている。
真摯に運命づけよう。LIPHLICHは、この作品を放つために生を受けた四人である。
現金に吐露してみせよう。私は、この憎らしいほどに格好良い作品を売って売って売りまくりたい。
惜しまず披露しよう。ペテン師は英語で「swindler」。文字を並べ替えるとなんと「Shindo Wataru」になるのだ!
という6つ目の嘘はあまりにお粗末。御口直しに最適な最高品質の生ペテンは間もなくあなたの耳に注がれる。

一部二部満員御礼!という大偉業を成し遂げたことにより、この地下室は本日限り夢の馬車へと早変わり。
三半規管自慢のお嬢様をも大いに酔わせる彼らとの素敵な時間を思う存分、いやそれ以上にお楽しみください。

2015年7月25日
今までと、今この場にいる全てのLIPHLICH・ウェンディの皆様に酷く一方的な愛と感謝を。