わたくしごと

私はミエ・ハリ

休日、買い物。
家から駐車場へと向かう途中、飲み物を買おうといつもの自販機の前へ。
財布を開くと小銭がなく、お札も一万円札しかない。
小さなことだけど、このときのモヤモヤ感たるや、なかなかのものだよね(共感得ズ)。
そうなった場合、「コンビニで買うかね」となって、近所のミニストップへ入るのが埼玉県民の性。
しかし、ここで私の百ある「面倒気質」のひとつが発動します。

ジュースだけレジに持っていって、一万円札を出したら「あぁこいつ両替しに来たんだな」って思われるかな…

数年前までは会計時に一度小銭を確認する振りをして、声を出さずにアッチャ~感を出しつつ、「すみません。一万円札で良いですか…」という流れで諭吉チャレンジを試みていたものの、三十も優に過ぎた今、その演技にもだんだん疲れてきた私は、重い足取りで店内に設置されたATMへ向かう。

step.1
9,000円おろしたいよ、の操作

step.2
「手数料216円かかるよ?いいの?」の表示

step.3
震える指でOKをプッシュ

今から買う物のために、今から買う物の約2倍の手数料を支払うこの不条理。
「なにやってんだろ…」と思いながら、容赦なく不揃いな千円札9枚の向きを揃えて財布にしまう(面倒気質2:お札の向きがとても気になる)。

さて、この不憫を乗り越えたあとの私ときたらもはや無敵だ。
ミルクティーを手にレジへと足早に向かい、「お札でいいですかね!お札界で一番弱者な千円札で!お支払いします!」ってな面持ちで会計を済ませる。
「袋は結構です。」と言っても、ここの店員さんとは周波数の相性が悪いのか、大抵袋に入れられてしまう(でも、愛想が良くて好き)。

そう、私は自覚しているんです。
自分は性根が見栄っ張りなんだということを。

割引クーポンを出すこととか、今日は何とかの日なので何割引きとか、「○○と言ったら何パーセントオフ!」とか、そういうのが恥ずかしくて想像するだけで足がすくむ。
割引券で差し引かれる金額よりも、それを出して「君、こんな綺麗にクーポン切り取ってまでうちの商品を値切りに来たのかい?」と思われる苦痛を現金化してみたときの金額の方が遥かに高いので、好んでそっちを選ぶのです。別に損はしてないですしね(そもそも店員さんはそんなこと思わない)。
さっきの手数料の話もまったく同じで、「両替しに来たのかい?」な眼差しビームによる怪我の治療費が216円よりもいくらか割高なのよ。保険効かないしね。

これに限らず、私は時間(上でいうところの私的辱めタイム)をお金で買うことに昔から何の抵抗も感じないタイプの人間です。
人とご飯を食べに行ったとき、相手が女性だと特にですが、会計時における「私も出すよ!いや、悪いよ!」のあの時間がとにかく苦痛でならず、「もう払わせて!この時間を買わせて!店員さん!料金2割増しにしてもらっていいので、この子が財布を開く前に一瞬で私の財布から代金を引き抜いてください!」と嘆き叫びたくなる。そんなレベルです(病気)。
先手を打ち、相手がお手洗いに行っている間にサラッと会計を済ませ、「もう払っといたよフフン」という手法も今まで幾度となく考えてはみたのですが、それはそれで「不細工がやるにはキザ過ぎて恥ずかしいから」という結論に達し、今に至るのであります。

お仕事で音楽のことを書くときに専門用語や横文字をあまり使わない理由もそれにちょっと似ています。
私の羞恥心は異常なくらい過敏なのです。花をさしたいくらいにね。
もちろん、その「恥ずかしい」の基準は私の捻じ曲がった心が生むものであって、専門用語バンバン横文字バンバンな方を見掛けても「こいつ格好つけてんなぁ」とは思わない。
共感してくださる方がいるかどうかは分かりませんが、私には「相手がやってる分にはなんとも思わないけど、それをやっている自分は嫌だ」ということが非常に多く存在します。
「お前ごときが何を偉そうに」とか、「どの口で言ってんだこの偏平足が」という戒め(?)の気持ちが何をするにも付き纏ってくるんですね。
変な意味で自分に厳しいのよ。本当に変な意味で。

あぁ話がごちゃごちゃになってしまった。お会計の話ね。
「お金を払ってもらって当たり前だと思ってる女は腹が立つ」的な話を男性から聞くことは多いけど、私はむしろそっちの方が楽で良い。
何年も付き合っている彼女の財布の色も知らない哀れマンでも全然構いまへん。
とまぁこんな話を今までいろんな人にしてきたのですが、イマイチの共感を得な具合だったので、広大なインターネットの海に投げてみて「あぁ分かるよソレ」と思ってくださる方が一人でも見つかることを願うばかりであるまじろ。

お金に限らず、日常のいろいろなことに適応するこの病に苛まれた私を、ときに人様は「優しい」とか「大人」などと言ってくれますが、実際のところ全ッ然違うんですぜっていうね。そんなお話でした。

はてさてそうして、私は今日も自販機の前に立ち、小銭を確認する。
でも今度は千円札が一枚だけ入っていたぞ。ミルクティーを買う。
容赦なく100円玉と10円玉だけで返ってくるお釣りがすべて落ち切るまで黙って待っているときの自分が結構可愛いと思ったりする。
その「なんとなくな心地よさ」が、小銭で重くなる財布への嫌悪感に勝るのでございます。

どうだい。びっくりするほど無駄な話を聞かされた今の心境は。アッハッハ。
それならせめて、良い木曜日をお送りくださいまし。