わたくしごと

深るい話

2017年7月14日。その日、私は新宿ReNYでCDの出張販売をしていました。いわゆるライヴ会場での「即売」というやつです。
その日は、Kra・ウミユリ・Develop One’s Faculties・heidi.・Mix Speaker’s, Inc.・夜という豪華面々による「その世代」直撃のハイパープレミアムウルトラドウナッチャッテンノギグ。
仕事でありながら、私自身も紛うことなき「その世代」のV系ファンでありますからして、「ここまで素敵な一夜が約束されたイベントあるものかね…」と、ワクワクしながら会場へ向かいました。

CDの販売をしつつ、当日はライヴアカウントでの「140文字レポ」も担当していた私。
各バンドの演奏後に速攻でレポを打ち込み、リアルタイムで公開するというものです。
過去のあれそれを御覧になったことのある方にはお分かりいただけるかと存じますが、なんせ私の文章は長文になりがちなので、いくら1バンド30分足らずのステージとはいえ、その模様を140文字でお伝えするというのはなかなかにシイキビな条件でした。
無論、ライヴを楽しんでいる暇などありませぬ。言うまでもなく、お仕事ですからね。

そして、これまた言うまでもなく、ライヴは全編通して大変素晴らしかった。
似た色をひとつとして持ち合わせていない6バンドによる競演でありながら、しかしどこかに一本筋が通っている様な、その不思議な一体感に音楽の妙を感じたものです。
この世代特有の「色こそ違えど、好きになるバンドが似る」という共通意識は実に愉快。
この日会場に集まった多くのお客様、または出演者一覧をご覧になって「おお!」となった方はきっと、ヴィジュアル系であることへの、また、創り出す音楽への拘りが滲み出ているバンドに強く心惹かれるのでしょう。
入場時の「どのバンドを観に来ましたか?」という質問は、あの日の来場者様にとってなかなかの難問だったことが予想されます。

わかるよ、そのニュアンス

トリのバンドが演奏を終え、最後の140文字を打ち込んだ後、「いやぁ良いイベントだったなぁーお客として来たかったけども!」なんてことを思いつつ、ロビーへと戻る私。
お客様は既に全員外へ出ておられ、スタッフとアーティストだけが会場内にいる状態でした。
ライヴ後特有の「THE祭りのあと感」と言いますか、あの適度に緩く静かな環境が好きだった私ですが、そう悠長にはいっておられません。
何故って、私はアーティストとの接触を極めて苦手とすることでお馴染みの丑年蟹座B型人間(ロイヤルストレートフラッシュ)。
BPM600のスピード感でCDを整頓し、会場から誰よりも早く飛び出さなくてはならない身にあるため、そりゃもう必死でした。

一通りの確認作業を終え、いざ「ロイヤルホストへ続く螺旋階段を降りようぞ!」と荷物を持ち上げた瞬間、背後から「お疲れ様です」と、なんともか細く可愛らしい声が。
「どなたかしら?まさかアーティストじゃあるまいよ…」と恐る恐る後ろを振り向くと、そこにはDevelop One’s FacultiesのGt.ruiさん(from Nagoya)が立っておられました。
初めてお会いしたときに「(私の文章諸々を見て)女性かと思ってました」と言われ、「ああこんな”華奢”とは無縁な体型の男で申し訳ない…」と思って以来、「なんとなく申し訳ないから近付けないアーティストランキング1位」に躍り出たruiさんとあって、思わず「あ…お疲れ様です…」と蚊の鳴く様な声で返したことを覚えています。
そして、畏れ多くもこんなやりとりをさせていただいたのです。

 

ruiさん
ruiさん
ライヴ観ていただけましたか?
私
途中からでしたけど、拝見しました。
初めて生で観ることが出来てとても嬉しかったです。
ruiさん
ruiさん
あーやっと観てもらえた。良かったです。どうでしたか?
私
いやもう素晴らしかったです。
『monochro』が聴けたのが本当に嬉しくて。
あの曲のただでは終わらないところが大好きで、自分にとってあの曲のサビはラストのアウトロだと思っています。そのくらい、あのギターソロが好きです。
ruiさん
ruiさん
嬉しいです。本人が聞いたら絶対に喜びます!

 

そこで、私の頭上には大きな「?」が。
というのも、この『monochro』という楽曲のアウトロは、ruiさんが担当されているフレーズなのです。
「あれ?”本人が喜びます”って、あの最高のアウトロを弾いているのはruiさん!あなたでしょうに!」と、声が喉元まで出かかったとき、私は気付きました。
「あぁ、この人はそのフレーズを弾いているご自身ではなく、作曲者であるyuyaさんを称えるのか」と。
たった3分程度の会話のなかにあったこのやりとりが今でもずっと頭に残っていて、『monochro』を再生するたびにそのときのことを思い出します。もう2年も前のことなのに。

あくまでも私個人の思うところではありますが、Develop One‘s Facultiesも、lynch.もumbrellaもLIPHLICHもDEZERTもそう。
「うちのヴォーカルを褒める奴はセンスが良い。ただ、悪く言ったらタダじゃおかねぇ」といったオーラを漂わせる楽器隊(メンバー)の気迫というか、口に出さずとも伝わってくるそういった熱い想いは、一般人としてぼんやり生きている私にとってどうしようもなく格好良く見えてしまうものです。
どういうわけか、ヴォーカリストがメインコンポーザーであるバンドにその類のメラメラを感じることが多い気がしています。
いわゆる「身内」であるメンバーが外の人間に褒められることをあんなに純な笑顔で喜ばれてしまっては、「こっちにも幸せが移っちまう!」と。そんなハッピー感染を強烈に感じた一夜のほんの数分の出来事でした。

それから数年経ったある日、ruiさんと少しだけ立ち話をさせていただいた際に「ruiさんのパーソナル本を出せたら良いですよね。タイトルは”ルイの憂鬱”が良いんですが…」と私が半ば冗談めかして切り出してみたところ、前のめりで「取材してくれたら、そこでしか話さないことをいくらでも用意しますよ」と言ってくださったこともほんのり思い出してしまったり…
なんだか物凄く「怒」と「哀」に敷き詰められた一冊に仕上がる気がしてなりませんが、いつか実現したい夢の一つとして抱えていけたらいいなと思っています。

私はアーティストへの敬意が重たすぎるが故、「バンドマン恐怖症」という不治の病を患っておりますので、まずは「インタビュー」という自殺行為に程近い荒療治を幾度も経験し、その環境に慣れなければなりません。
それさえ払拭できれば、他にない面白いもの(へんなもの)を作れる自信はちょこっとだけあるので、色々頑張ります。なにか完成した暁には御覧くだされよ。
インタビューもライヴレポも家電のPR記事作成もバナーデザインも良いけど、とにかく私は今、猛烈に人と接したい!
「フリーランス」は和訳すると「孤独死」って意味ですからね。いやほんとに(‘;’)…

にゃーん師匠
にゃーん師匠
地獄へようこそ。

 

というわけで、本日は私の知り得る「ちょっと素敵な小噺」のひとつ、ruiさんの「深るい話」を披露させていただきました。
やっぱり信念のあるバンドマンって格好良い。痺れたハートでおやすみなさいものくろおんげんかしてください。

『monochro』のMV SPOT(アウトロは聴けぬ)