わたくしごと

見誤るな時代感!

私がよく行く大宮の喫茶店。
外観からは予想もつかない程に広く、あちらこちらにお洒落で大きなテーブル・ソファが並ぶ。
店内BGMには、店主がフランスで集めてきたCDが延々流れており、なんともまぁ落ち着くお店だ。

最近では店主に顔を覚えられ、ついには他愛もない話をする関係にまでなった。
私はここのアイスカフェオレが大好きなので、決まってそいつを注文する。
そんな日々が続いたせいで、ここ数日は食べ物を注文した直後に彼が「と、アイスカフェオレですよね!」と笑顔で「分かってまっせ感」を出してくる様になってきた。
正直、そういうのはやめてほしいと思う(最低)。

肌が浅黒く、目つき鋭く、服装も常にピシッとされているので、一見ちょっとおっかない店主だが、一度心を許した人には猛烈に懐く性分だそうで、最近では行く度に食後のアイスをサービスしてくれる。
正直な話、申し訳ないのでそれもやめてほしい(死刑)。

先日、いつもの様にカフェオレを飲んでいると、店主が誇らしげな口調で「うちのカフェオレ、美味しいでしょう?」と言ってきた。
私が「美味しいですね」と返すと、「うちのカフェオレは若い子には苦いって言われるけど、大人には評判がすごく良いんですよ。他店とは違って、エスプレッソで淹れているのでね。我々くらいの年齢になると、スタバに行っても飲みたいものなんてなくなるでしょう?」と続けた。
若干の違和感を覚えながらも、「そうですね。タリーズのミルクティーは最高に美味しいと思いますけど、スタバは何頼んでいいか分からないです」と返すと、彼はしてやったりな笑みを浮かべ、今度は唐突に私の女性事情について切り込んできた。
私が「22~25歳くらいの女性が30~40代の男性とお付き合いをするケースが多い」といった話をすると、「そうそう。そのくらいの子はあまり年齢を気にしないみたいですね。我々くらいの年齢がちょうどいいって思っているんでしょうね」と、彼。
その言葉が鼓膜をリンリン♪と鳴らした瞬間、マイ違和が縦横無尽に暴れ出し、私は思わずこんなことを尋ねた。

「失礼ですが、店長さんっておいくつなんですか?」

「50です(即答)」

先に言っておくと、私が34ということはその会話のなかで既に申告している。
であるにも関わらず、彼は16歳も下の私を「我々」と、まるで同世代であるかの様に扱ったのだ。
口元をむにゅむにゅさせる私ではあったが、こういった類の「ギリギリ噛み合ってない会話」をした際、決まってこんな言葉を自身に問いかける。

「お前もどこかで同じ様なことをしているんじゃないか?」と。

私は、「自分のことは自分が一番分かっている」という理論は大嘘だと思っている。
というのも、これまで「自己評価」と「他者からの評価」がまるで真逆な人間を多く見てきたからだ。
「こういう女が嫌い」とイライラしながら同性をこきおろす女性。そんな彼女の掲げる「嫌いな女」の条件がまんま彼女本人に当てはまっているケースに幾度も遭遇したり、面接の場で学歴マウントを取ってきた男性面接官が私の話す高校生レベルの熟語に「え?それはどういう意味ですか?」と首を傾げてきたり。
そういったシーンに出くわす度に私は相手に対して「情けないなぁ」と一瞬思いはするものの、その直後には「いや待てよ。もしかしたら、自分もそんなことを他人にしているかもしれないぞ」と、過去の発言をさらってみる。
思い当たる節がないからこそ、余計不安になるのだ。

大抵の大人は、自分の嘘がバレないものだと思っている。
「共感性羞恥心」という言葉が一時期流行っていたが、おそらくそれに似た感情を彼女&彼に抱いてしまう私にとって、そこを問い詰める行為は自爆に他ならない。
よって、ただただ気付かない振りをしてやり過ごす。これもこれで結構苦しいのだ。

男はいつまでも自分は若いままで、周りだけがどんどん老いていく様な錯覚に陥る生き物だと思う。
鏡を見ているときの自分は日常生活史上最もイケている顔をしているので、その瞬間の自分しか見ていないのなら、それもまた仕方ない様な気もするけれど。
おじさんが同い年のおばさん(同級生など)にデリカシーのない言葉を悪気なく吐くのもそういった錯覚のせいだろう。
かくいう私も私で、以前同級生のFacebookを見たときに「うわ!おじさんじゃん!!」と絶句した覚えがある。
でも、そんな私も私で彼からすれば同じだけおじさんになっているのだ。
ただ、それを自覚しているだけまだマシな気がしている。

「age is just a number!(年齢なんて単なる数字よ!)」なんて言ってはみても、女性の多くは自身の年齢を男よりは重く捉えており、結婚の話になるとそれはより深刻さを増していく。
出産を考えてなのか、結婚適齢期から逆算してなのか、周りとは違う自分への焦りなのか、はたまたいくつになっても若い女性が好きな男たちの無礼な発言からなのかは分からないけれど、私の周りでも27歳あたりを境にして、一人アタフタする子がとても多い。
そんな境遇に置かれながら、男の年齢に対して寛容な女性らを見ては、「まじで魂のステージが違う!」なんてことを割と頻繁に思う。
現に見た目における「劣化」という冷酷な言葉は、芸能人でも女性に向けられることがほとんどだ。
そういう意味で、男は甘やかされていると思うし、だからこそ自身が年相応に老いていることに気付けない人が多いのだとも思う。
「これはスキンシップであって、セクハラのつもりじゃなかった」というおじさんの言い訳もそういった高慢さからだろう。
例のエスプレッソ店主が女子アルバイトの頭を撫でたりしないか、大変に心配でありんす。

話は少し変わって、最近年甲斐もなくTikTokを見るようになった。
正直、口をポカーンと開けてしまう様な世界がそこには広がっている。
TikTokにはその都度流行りがあり、「おすすめ」として流れてくる動画は、やっている人が違うだけで、その内容はまるで同じことがとても多い。
そんな中で、割と頻繁に目にする類の動画がある。
このブログを読んでいる方に20代前半、もしくはティーンなど存在しないだろうから、今からあげる例に驚かれるかもしれない。そんな動画の内容は下記の通りだ。覚悟しな。

・ホームレスのおじさんに食べ物(もしくは金銭)を与え、喜んでいるおじさんの様子を撮影しているもの
※コメントには「優しい!ほっこりした!」といった賞賛の言葉が数百並ぶ

・遠距離恋愛中のカップルが駅のホームで別れを告げる際、寂しくて泣いている彼女の顔を延々撮り続けているもの
※コメントには「こんな彼女最高すぎる!」の行列

・ドライブスルーや店内で、店員さん相手にウケ狙いの発言(及びアクション)を繰り出し、困惑している店員さんの様子を集団でゲラゲラ笑いながら撮影しているもの
※コメントには「これは草www」が高原レベルに広がる

もちろん、なかには微笑ましいものもあるが、ザーッと流し見しているとこの手の動画がなかなかに多い。
それらを目にしたとき、私は「これの何が優しくて楽しくて最高なんだろう…」と思うのだが、そう思った瞬間に「これこそがエスプレッソ店主現象!」と震えるのだ。
何を勘違いしているんだと。私の思う非常識と、若人の非常識は違うじゃないかと。
そこで「なんで?どうして?」と困惑すること自体が、彼らからしたらズレているのだろう。
大量のコメントのなかには、「偽善者乙」「いちいち撮るとかキモい」「泣き顔撮影されつづけてる彼女が可哀想」といったものも少数見受けられるが、その手のコメントには決まって「幸せ(楽しい)なんだからいいじゃん。いちいちうるせーよ」といった罵声がつき、否定派はあっちゅう間に潰されていく。
いっときは「あ。私と同じような考えの子もいるのか」と安堵するものの、その後のやられっぷりを目にしては、「あぁ…これも時代か…」と閉口するばかり。

私が「迷惑行為だな」と思おうが思わなかろうが、流行れば広がり、同じことをする人たちでアプリ中が溢れ返る。
TikTokにはとてつもない数の利用者がいるが、実際動画でやっていることの種類でいうとせいぜい10通りくらいなもの。
多分、そこに「個性」なんて仰々しいものは必要ないのだろう。
テレビ画面をスマホで録画した映像をアップ→大量のRTを得て大喜び→分かりやすく調子に乗ってワッハッハ!な人もTwitterでよく見掛ける。
どうやらイマドキの承認欲求とやらは、「自分が生み、発信したもの」に対する評価でなくても満たされるみたいだ。
なんだかズレている気もするけれど、それも当人からしたら「うるせーよおじさん」で片付く話なのだろう。ああ世知辛ぇカフェオレェ。

なんじゃかんじゃと言ってはみたものの、そんなTikTok動画のなかでも、最近ものすごく感動した映像に出逢った。
それは、3才くらいの子の胸元につけた小型カメラで、ディズニーランドを撮影した映像だ。
その子から見るディズニーの世界は、我々が思うよりも遥かに「ランド!!」であり、近寄ってくるキャラクターや眼前にそびえるシンデレラ城の迫力ったら並じゃない。
小さな手でポップコーンを頬張ったり、見てもよく分からないであろうガイドマップを広げてケラケラ笑ってみたり、階段を一段ずつ一生懸命のぼったり、スタッフの方々が目線を合わせて優しく接してくれている姿を主観で観ていると、どういうわけか泣きそうになってくる。
「記憶が定まっていない内は連れていかなくていいかな」と思っていた数多の夫婦の心を強烈に突き動かす力がある動画、というかあれはもはや立派な「作品」だ。
現に私も、「子供ができたら3才くらいでもディズニーランドに連れていってあげよう」と思ったもの。
あの映像を撮影したご夫婦の発想力とセンスは素晴らしいなぁ。
そして、それに感化され「我が子でも!」と、同じ様な映像を撮ろうとする夫婦が今後溢れかえることだろうよ。
なかには、それを発信したいがためにディズニー行きを企画する承認欲求ペアレンツもいそうだなぁ。
まぁ幸せなんだから、それはそれでいいんだけどね(時代)。

というわけで、今日は「見誤るな時代感!」をテーマにお話をしてみました。
もし、なにかしらの検索で好きに観られるのであれば、みなさんも是非あのディズニーチャイルドムービーを体感してみてください。超感動するよ。
ではでは、引き続き良い夜をお過ごしください。強く生きていこうアラサー。おやすみシーサー。