わたくしごと

熊谷の美味しいかき氷屋さん「慈げん」

絵画に興味なんてないのにふらっと美術館に寄ってみたり、星にまるっきり関心がないくせに週一でプラネタリウムに通ってみたり、何にも買わないと分かっているのに見掛けるたびKALDIに吸い込まれてしまったり。

そんな「特別好きではないけど、なんか行っちゃう」という「なんとなくの動機」に翻弄されっぱなしな我が人生ですが、「美術館行ってきた」「プラネタリウム行ってきた」なんて話をすると、周りの人は「芸術的なものが好きなんだね」などと私を買い被るわけです。

でも、「なんとなくの魔力って、実は最強なんじゃないか」とも思っていたりして、それこそ「なんでもないときになんとなく聴いちゃう音楽」とか、「なんとなく思い出す日常の些細な一コマ」には、大袈裟な「好き」を超える何かが潜んでいると思うんですよね。

今日は、そんな私にとっての「なんとなく、なんとなくね」のひとつである「かき氷」についてお話します。

前述の通り、「慢性的なんとなく症患者」の私は、特別かき氷が好きなわけでもないのに、関東で人気のかき氷屋さんをほぼコンプリートしていたりします。
そして、そのなかにただ一つ「なんとなく」でなく(紛らわし)、喉元から愛してやまないかき氷屋さんが存在するのです。

彼の名は、埼玉県熊谷市在住の「慈げん」

忘れもしない2014年7月21日。
「なんでもすごいかき氷屋さんがあるらしい」という噂を聞きつけた私は、その真偽を確かめるべく、熊の谷へと向かいました。
田舎道という田舎道を抜け、2時間に渡るドライブの末に辿り着いた店先には、既に長蛇の列。
おとなしく最後尾につき、ぼんやり突っ立っていると、お店の玄関からこちらに向かって真っ直ぐに歩いてくる店員さんの姿が。
彼女は私の目の前でピタッと足を止め、一言。

 

「今日は、お客様で最後になりますので、これを持っていただけませんか?」

 

そう言って手渡されたのは、最後尾の印(木の札だったか紙だったか)。
まさかの重役を担った私は、背後に人が並ばない様、「本日はここまでよ」的なそいつを最後尾で掲げることに。
それからというもの、絶えず後ろにつこうとする多くのお客さんに対し、スタッフの様な口調で「ごめんなさい。今日はここまでなんです」と頭を垂れる90minを過ごすのでした。

旧店舗の玄関前にあったオブジェ

並び始めてから2時間が過ぎた頃、ようやくお店にイン。
お札係の定年退職を迎えた私は、シンプルを好むその口でミルクのかき氷を注文しました。
果物があまり好きではない私にとって、消去法で選ばれたはずのコレがもうこの世のものとは思えないほど美味しく(熊谷ってこの世だよね?)、その優しい衝撃に現を抜かしては、生まれて初めて「かき氷のおかわり」までキメちゃう始末。

キュートな見た目と、わたあめの様に繊細な氷を一口また一口と味わう度、「なにこれ。氷なの?」と、原材料をも疑い出すほどの新食感にそれはそれは絶句したものです。

ふわふわのふわ

一緒に来てくれた当時の彼女は外で並んでいる間蚊に刺されまくり、「かゆいかゆい」と苦しそうにしていましたが、絶品のかき氷を食べている間はムヒ要らずの上機嫌で、「こんなに美味しいかき氷食べたことない…美味しい…おいしい…」と嬉々に次ぐ嬉々を全身で表現していました。

大満足なかき氷タイムを終えた私たちが会計を済ませようとすると、店員さんが「長いこと最後尾の係をしてくださいましたので、一杯分無料にさせていただきますね」と熊の一声。
「いえいえ。大したことないですし、本当に美味しかったので結構ですー」と返すも、熊の谷の人は優しさが過ぎる気質なのか、私の断りを一切聞き入れず、力技でおまけしてくださいました(もう時効でしょ)。

その後も一夏に一度のペースでお店にお邪魔していたのですが、これまた「なんとなく」の病を患ってしまい、気付けば熊谷には行かなくなっていた私。
それでも夏になるたび、「慈げんのかき氷食べたいなぁ」と思っていたので、その中毒性には心底驚かされます。
だって、「好きな食べ物は?」と問われても、「かき氷」なんて200番目を過ぎても出てこないもの。
にも関わらず、それを目当てに片道2時間掛けて熊谷まで行っていたのだから、その魅力たるや慈げんのかき氷の如し!といったところよ(何の例えにもなってない)。

そんな「慈げん欠乏症」に悩まされた2018年。
鬱々とした私の元にハッピーなニュースが舞い込んできました。
それは、私の地元中の地元である「さいたま市」に慈げんが期間限定でやってくるとの報。

うれしさのあまり描いたあざらし

「埼玉のラスベガス」こと大大大大都会の大宮、それも由緒正しき高島屋とあっては行かずにゃいられまいと、その日をとても楽しみにしていました。

そして、当日〜〜〜高島屋〜〜〜。

階段で整理券を貰い、ワクワクしながらそのときを待ちます。
本店ではまず有り得ぬ超短い待ち時間で店内へ!

抹茶とミルク
私はミルクココアを

 

問答無用で!美味しい!

何度食べても「本当にこれは氷なのか?」と勘繰ってしまう柔らかな口当たり、そして奇抜でありながら「是!」と声高に肯定せざるを得ない秀逸なメニューの数々。そして値段の高さ(小声)。

久々の慈げんは過去の思い出をも上回る美味しさで私を迎え入れてくれました。

 

…が!

 

やはりね、私は大宮シティの超快適な百貨店でではなく、熊谷の地でこの味を楽しみたいと思ってしまったのよ。
餅は餅屋。熊は熊谷ってやつね。聞いたことないけど。

そんな想いもあって、「今年こそは未だ見ぬ新店へ行こうぞ」と意気込んではみたものの、知らぬ間にお店はネットでの予約制となっていて大困惑。
この予約というのが曲者で、営業日前夜の19時から受付が開始されるのですが、何度チャレンジしても一瞬で「キャンセル待ち」になってしまい、嘆き悲しむサタデーナイトが続くつづくツヅク。
それでも諦めずにいたところ、やっと先週の日曜日に予約を勝ち取ることができました。

わーい
わわーい

「移転」とは言ったものの、熊谷 to 熊谷。
相変わらず2時間の運転を強いられるわけですが、もうそんなことはどうでも良いのです。

予約時間のちょい前に外の椅子で待っていると、隣には同じ時間帯のお客さんであろうカップルが。
女性が「ミルクが定番らしいよ!」と彼氏をつつくものの、彼氏は「へぇーそうなんだー」となんだか興味なさげ。

「へいへい彼氏。そんな冷静でいられるのも今のうちだぞ」と。
「かき氷を口に含んだ瞬間の君の表情を私は絶対に見逃さないぞ」と。

そう意気込むも無念。
私は私で目の前の氷に夢中になっていたので、その決意を思い出したのが翌木曜の今だったりします。

ももとミルク&ミルクココア

ただただ「美味しい」としか言い様のないかき氷を、ただただ「おいしい」と言いながら口に運ぶだけのロボと化した私。

味に覚える感動はもちろん、改めて思ったのが、やはり環境というか「地」の力ってあるよなぁということ。
「熊谷慈げんここに在り」って感じだったわ。ご馳走様でした。

というわけで、埼玉県のお近くにお住まいの方もそうでない方も爬虫類も齧歯類のみんなも、もし「そこまでかき氷好きってわけじゃないけど、そんなに美味しいんなら食べてみようかな」と思われたのであれば、「好きなものをひとつ増やす旅」と題し、熊谷慈げんへ足を運んでみてはいかがでしょうか。
「氷の概念を覆されたい」という特殊な癖を持つ方にも心からオススメ致します。

あ。でも、予約するだけして無断キャンセルなんてしようものなら、店先の獅子舞に喰い殺されてイチゴシロップにされちゃうので、その点だけはどうかお気をつけあそばせ。

それでは、今日はこの辺で。
引き続き良い一日をお過ごしください。
あー慈げん食べたい。

あざちゃん
あざちゃん