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DEZERT 肋骨新聞『「タイトルなし」』

消化器いじめ深刻化

体内に鬱積する汚れた感情を器用に排泄出来ない不器用な現代人を中心に流行し、今尚猛威を振っている「新型嘔吐」。
従来の症状と異なるのは、吐いても吐いても一向に胃が空かず、極めて慢性的な経過をたどる点にある。
本紙にのみ掲載を許された極秘裏情報だが、この症状を和らげる治療薬が某団体により開発され、11月12日から処方開始となる。
新薬の名称は、なし。極めて怪しげな卵型の錠剤だという。

 

ーーー嗚呼フカイカンセカイカンコラムーーー

いやはやまったく「世界観」という常套句はなんとも退屈で、雑で、滑稽なくせにもっともそうで困る。
取り巻く環境から否応にも刺激を受け、日々移り変わる心情を収めた作品に「一貫した世界観」があり、人々が言う程それが量産されているというのであれば、なんだかとてもやらせっぽいのだ。
ましてや音楽業界において他に類を見ない「意義ある支離滅裂」に狂っておられる此方の厄介な首謀者様が描く作品に「安定感」なんて甘えを求める時点で心底どうかしているとしか思えない。
仮に「世界観」というものがあるとするなら、それはこの音楽が聴き手に及ぼす「愉快な悪影響」を指すものだろう。

例えば、とある夕刻の埼京線。帰路を共にする友人たちと楽しそうに談笑する女学生。
友人がひとりふたりと目的駅で降りていき、最後の一人と笑顔で「バイバイ。」を交わす。
一人きりになり、窓から見える友人の顔が見えなくなったその瞬間、震える手を鞄につっこみ、禁断症状に急かされた指で掴むアイポッド。
逸る気持ちを抑えきれない彼女が一目散に「再生」を命じたのがこの『「タイトルなし」』であったら。
不穏な楽曲名を映す液晶の奥に反射した表情が先程までのものとは質の違う笑みであったなら…

あ あ こ れ は ま ご う こ と な き せ か い か ん 。

(咳払)
この円盤には、孤独が敷き詰められている。それも極めて純粋で潔癖な性質だ。
しかし、そんな混じり気なしの箱入り孤独ちゃんも、ときとして何者かの温もりにより濁ってしまうことがあり、その生温い混濁には説明不能なまでに複雑な悲哀と歪な求愛感情が芽を出す。
こちらの理解を易々とは受け取らず、孤独に帰ろうとする後ろ姿から「目が離せない」なら不治の病。
特に次の言葉をこちらから迎えに行かなければ成立しない深い闇と間に苛まれた中盤二曲
『「擬死」』『さぁミルクを飲みましょう。』にしたためられた鈍い独白をその可愛いお耳に注ぐ際は、真っ黒な歌詞カードに浮かぶ致死量の悲痛ひとつひとつを指紋で愛でながら召し上がれ。
耐えきれず差し伸べた手も視認されないほどの暗闇に強く引かれた唄と聴き手の境界線。
確かな距離感が作為的に生み出す窒息寸前の息苦しさをあなたはどう受け止めるつもりだろうか。

「放っておけない」「私なら分かってあげられる」
そんな聴き手の母性の更に第二関節分奥にある決して触れてはならないタダの本能にまで根を下ろす首謀者 千秋の渇いた声と詩。
孤独な彼を慰むことなく更に暗がりへと誘導する湿ったサウンドと、背後から殴り殺さんばかりに襲いかかる高出力かつ表情豊かなドラム。
その全てが重なる瞬間瞬間に飛び散る猛毒は、私たち販売店にとって脅威でしかない。
しかし、こんなにも愛らしく狂った問題作ならば、惜しまず全身全霊で売り続けようではないか。

(咳払2)
サァサァそちらのお嬢様。
こんな低質な文章に付き合っている場合じゃございません。
「鬱屈を吐き尽くしてしまいたい」と願う本能を抑制する確かな理性。
その葛藤と苦悩に喘ぐ歌声を欲情の餌としてしまうイケない私たちにとてもよく似た『脳姦少年』を逸早く救いに行かなくては。
まぁ、彼は誰のことも待っちゃいませんし、救いの代わりに×を要求する狂人君なんですけどネ…

あざちゃん
あざちゃん
以上で「タイトルなし」版はおしまいです。
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