POP制作

悠希『浸』

ー 作るも弾くも歌うもひとり  完全無農薬の悠希栽培作品集 ー

姿は見えずとも、体感距離は映像より遥かに近い。
今や過去の娯楽となりつつある「ラヂオ」の魅力。
悠希さん初の弾き語り音源集となる『浸』の世界もそれとよく似ています。

孤独に喘ぎながら聴き手の頭上を旋回し、安らぎの着地点を探し求める独特な癖のハイトーン。
暗がりを好むメロディー&低体温な歌声に追い出された笑顔と希望は未だ失踪中。
これほどまでに影の似合う音楽家は、静岡広しと言えど他に存在しないことでしょう。
とはいえ、ただ冷たいだけではなく、膨大な影があるからこそ、隙間に散らされた僅か一瞬一語の温もりが映える。
その奇跡と見紛う程のきらめいた優しさがリスナァの心を10年単位できつく掴んで離さないこともまた事実なのです。

聴き手の情緒を悪戯にゆさぶりながら、蝕むように傷を癒す。
そんな歪んだ介抱の先に待つものは、紛れもない「依存」ただひとつでございます。
一種の病の様な性質を持った彼の美声と物寂しいメロディーの妙があなたの心についた傷へ最短距離で到達し寄生する超魅力的にして超危険なFM悠希の世界。
それを上質なステレオ音声でお届けしようという目論みです。

「欝系の歌ダイスキ!」と、その言葉に反してやけに明るい口調でお話しになるお嬢様には、ここに収められた『姥捨て山』を”暗闇で100周リピートの刑”に処したい次第。
可能であれば、歌詞カード片手にヘッドフォンを装着し、いつもより大きめの音量でお聴きくださいませ。
再生ボタンに触れた5分後、青ざめた顔した御自身との対面をどうぞお楽しみに。

傷付いたこと。
見たくなかったもの。
知りたくはなかったこと。
失うことに臆病なその手から尚もすり抜けていく、人・想い・記憶・温もり。
生きていれば、様々な苦痛に遭遇するものです。
そんな不条理かつ曖昧な日々を生きてさえ尚、諦めることなく今日まで精一杯歩き続けてきた御自身への御褒美としても最適な作品ですので、救急グッズのひとつとして一家に一枚お納めください。
無論、良薬故、だいぶ苦いんですけどね。