全世界を探し回っても、私以上に「飲み物」が好きな人間はいない。
これといって自慢できることなど何もない人生を送ってきた私が唯一ナンバーワンを自称できるくらいの好きさ。
「そんなに甘いものばっかり飲んでると病気になるよ」
そう言ってきた友人らが幾度となく風邪を患ったこの20年間、私はまったくといっていい程体調を崩さずに生きてきた。
血糖値も血圧も一切の異常なし。
おそらく、私は一気に死ぬのだろう。
病に慣れていない体はかえって脆弱だ。
「ゆっくり生きて、急に死ぬ」
そんな私の理想は、なかなかの高確率で叶うような気がしている。
飲食に対する欲を「飲」に全振りしているせいで、食べ物にはほとんど興味がなく、ひとりでいるときはとにかく美味しい飲み物をいただけるお店を選ぶ。
今最強にハマっているお店は、知る人ぞ知るあの名店「スターバックスコーヒー」だ。風の噂によると、どうやらチェーン店らしい。
ここの「ホワイトモカ」という飲み物が実に美味しい。
前世で何かあったのかと思うくらい脳にクる味わいだ。
近所に22時まで営業している店舗があるのだが、閉店30分前に起床した日ですら家を飛び出し、お店に乗り込むくらいの好きさ。
さっきから妙な「好きさ」を連発しているが、ここは安全地帯のメロディーにのせて読んでほしい。先に言っておくべきだった。
つい先日、新しい名刺を刷った。
無論の論、このうさぎが飲んでいるものはホワイトモカである。
そして、この絵には私がいかに飲み物を、そしてホワイトモカを愛しているかが表れている。
注目してほしいのはストローの長さ。
これは何を表しているかというと、「飲むたびにいちいちストローを口元へ持ってこなければならない煩わしさからの開放」だ。
どうやら私は飲み物を飲むスピードが異常らしく、500mlの水を平均6秒で飲み尽くす。
口の中をほぼ通っていないため、いわゆる「のどごし」だけで飲むことを楽しんでいる水屋泣かせな悪客。
しかし、ホワイトモカだけは極端にのどごさず、大事に飲みたい(謎の日本語)。
値段云々というより、味が大好きなので単純に長く楽しむためにゆっくり飲みたいのだ。
しかし、長く楽しめない理由が美味すぎる味のせいであることは明白。結果、雁字搦め。
ストローから口を離した瞬間にもう次のひと口が欲しくなる。これが苦しい。
「離れたばかりなのにもう会いたくなっちゃった」というデート帰りのLINEはなんとも愛らしいが、「離したばかりなのにもう飲みたくなっちゃった」という欲はもう欲が欲過ぎて醜いったらない。
現に、私のカップに描かれたスタバのキャラだけちょっと口角が下がって見える日がある。
「作業の手を止めず、”飲みたい”と思った瞬間に飲める環境だったら最高なのに」
そんな願いから、点滴スタイルの長ストローを脳内開発し、それを絵にしてみたのが先程の名刺裏だ。
「作業」なんて、なんだか格好良さげに言っているが、実際のところホワイトモカを手元に置いている時間は脳が「好きさ」に支配されているため、何も生み出せちゃいない。
「これはあまりに非効率だ」と思ってからはパソコンの持ち込みをやめ、ただホワイトモカを楽しむだけのおじさんに徹することにした。
ドラマでそういう役のオーディションがあったら是非参加したい。
はてさて、Chantyの『天翔る』か!ってくらいの長いイントロを越えて、本題へと移ろう。
飲み物が好き。異常に好き。ペースが早い。とにかく早い。
そんな私をやや高頻度で襲う苦悩ドキがある。
それは、人とファミレスへ入ったときにやってくる現象だ。
ここ最近、「打ち合わせ」という名の談笑会をクライアントの方々とする機会が増えてきた。
どのクライアントもとても優しい方ばかりなので、打ち合わせの場所決めを私に委ねてくださることが多く、そういったときは決まってファミレスを指定させてもらう。
理由はただひとつ。ドリンクバーが好きだから。
暗黙の了解で最初の一杯は一緒にドリンクを注ぎにいくのだが、問題はそこから先。
相手がまだ一口しか飲んでいないのに、私のコップは既に空。
地獄はこの瞬間から始まる。
クライアント「これこれこういう特集で、渡辺さん(私)にはこういうことをこうこう~」
困った。大事な話をされているのに内容が入ってこない。飲み物が欲しい。
しかし、欲望のままに何度も何度も「ごめんなさい。飲み物を注いできても宜しいでしょうか?」と席を立つなんて失礼はご法度。
映画の上映中、5分置きにお手洗いへ立つ友人を愛せるかと言われたら私も自信がない。
我慢せよ。さいたま市民といえど、こちとら一応社会人だ。
だがどうだろう。
この場を設けた最大の目的は「企業の意図を知り、己の意見を述べ、より良いものを作る」そのための案固めだ。
相手の話が入ってこない状態でロボットみたいに頷いている方が余程失礼ではないか。
そうだ、そっちの方が失礼だ。そうに違いない。だから飲み物を注がせてほしい。
そんな、言い訳なのか言い訳なのかも分からないような言い訳を必死に唱えるも、生まれつき遠慮がちな性格のため、口に出すまでには至らず、かと言ってコップに目をやると「あれ?こいつ飲み物欲しがってるのか?」と相手に気を遣わせてしまうため、そちらには断固として視線をやらない。
それどころか、そりゃあもう不自然なくらいにコップをテーブルの端っこへ追いやり、視界に入らないようにする徹底ぶり。
相手からすると「お、なんかやる気になってるな」と思われているかもしれない。
でも、頭のなかには「好きさ」がリフレインしていてそれどころではなかったりする。
社会人って、本当に大変だ。
帰りの運転中、「あぁカップから伸びる長いストローもいいけど、ドリンクバーの機械から席まで伸びる超超超ロングストローってのも理想だなぁ」なんて思ったりして、まだ6枚しか配っていない新名刺を早くも刷り直したくなっている。
悪戯にブログのドメインも名刺に入れてしまったため、もしかしたらクライアントのなかにこの文章を読んでいる方もいるかもしれない。
想像するだけでちょっとだけ恐ろしいので、一言だけ嘘偽りない私の気持ちをここで叫ばせていただきたい。
「ちゃんと聞いてます!!!」
というわけで、今日は「ドリンクバーに行くタイミングが合う人ってなかなかいないよね」というお話にお付き合いいただきました。
あなたはどうですか?そういうタイム感バッチリな人がいるでしょうか。
もしいるんだとしたら、その人とリズム隊を組むことをお勧めします。
良いグルーブ生んじゃうかもYO!
それでは、引き続き散々な木曜をお過ごしください。
美味しい飲み物でも飲みながらね。