言葉のこと

魁!!テロップ事変

フルテロップってのはどうしてこうも……めんどうなのかねぇ。

そう思い始めて、早一年が経ちました。
聞き取り・打ち込みで完了する取材記事の文字起こしとは違い、動画には「時間とデザイン」という厄介な二大巨頭が立ちはだかるため、戦いを終えたあとの神経はいつもボロボロでございます。

私はYouTube動画の編集に「Premiere Pro」というソフトを使用しています。
こやつがなかなかのペースで新機能をこしらえるうえ、既存の機能もどんどんパワーアップしていく優れモノなのですが、それでもテロップめんどい問題だけは一向に収束する気配がありません。

一人でマイクに向かって話しているだけの音声であれば、自動文字起こしツールを使ってそれなりに楽が出来ますし、複数人で話しているものでも以前よりはテロップ入れやデザインが効率的に行えるようになってきたのですが、表示のタイミングや言葉の抑揚に合わせたデザインを~となると、結局手動で打って調整するのが一番早い。
私のチャンネルには、フルテロップ60分コースの動画もそこそこあるので、一本完成させるたびに窓を開け、「もう二度とフルテロップなんてやるかァア!!」と絶叫するのですが、視聴者様からのお声や諸々のデータを見ては、「やっぱりあった方がいいんだなぁ~チクショー」と、都度思いとどまるのです。

今日は、そんな悩ましきテロップ事情についてお付き合いいただきたく。
といっても、高尚で建設的な話など一切ございません。
いつもの「言葉」にまつわる神経質で細けぇコマケェ戯言です。
あんまり言うと離脱されちゃいそうなので、早足で本題へとまいりましょう。

悩!テロップの忠実度

メディアや商業誌に寄せるテキスト記事であれば迷わぬが、動画上のテロップとなると話は別。そんな厄介な性質を持つ天敵をご紹介します。

いちいち項目を立てるほどのことでもないのでサラッと言おう。
それはズバリ、「いる」の表記です。
さっそく意味不明ですよね。例をご覧あそばせ。スクショカモン。

歯並びよすぎ久我新悟様

これは、一番最近アップしたインタビュームービーの一コマです。
白文字は私の発言をテロップに起こしたものなのですが、悩ましの種はこの「すごく尖ってたんですかね」のところ。
これを「尖ってたんですかね」にすべきかっていうね。まず謝るね。細かくてごめんね。

他にも「〜してて」と「〜していて」、「〜なんだけど」と「〜なのだけれども」、「やっぱ」と「やっぱり」、「ほんと」と「本当」などなど、例をあげればキリがありません。
後者の方がキチッとしていてフォーマルで素敵。
だけどもだけど、ラフめな会話の中で表示されるにはちょっと堅苦しくないですか?そうでもないの?まじ?

「こっちの方が場の空気感に合っている」という理由から、現状は口語感をそのまま打ち出した表記にしているのですが、「絶対にこっちが良い!」と言い切れるほどの確信はないというのが本音なんですよね(なのですよね)。

せっかくの機会なので、「そもそも何故フルテロップにするのか」についても考えてみましょうか。
といっても正解めいたものは既に出ていて、チャンネルを運営されている方々のおっしゃる解は大体この2つです。

 

「音が出せない環境でも楽しめるように」
「視聴維持率をキープするために」

 

この「視聴維持率」というのは、その動画が何分の地点まで再生されたかをパーセンテージ化したものです。全視聴者の平均をとった数値ですね。
例えば、10分の動画を1分までしか見られなければ、視聴維持率は10%。
ちなみにこの数値はGoogleから「ユーチューブヤメチマエ」と言われているに等しい低さです。
10分の動画であれば最低でも35%くらいはいかないと、おすすめや関連動画にまったく載せてもらえないので、それが続くとチャンネルは実質鎖国状態に陥ります。
それくらいに視聴維持率はチャンネルの認知に凄まじい影響を与えるモンスターなんですね。

これが趣味であれば気にすることもありませんが、仕事とあらば死活問題。
この視聴維持率とやらをどうにか伸ばすために今日も膨大な数の大人たちが頭を悩ませていて、彼らが編み出した攻略法のひとつに「フルテロップ化」があるというわけです。
人は動いているものを目で追う習性があるため、忙しなく入れ替わるテロップを表示させれば、ある程度は視聴者の離脱を防げるのでは?という目論見ですね。

とはいってもだ。
動画の内容そのものが面白くなければ、いくらテロップを入れようが派手な映像演出を加えようが結果は大きく変わらんと。
WEBメディア・ブログサイトにおけるSEO(検索結果の上位に表示させるための施策)もそうですが、「小手先のテクでワシらを欺けると思うなよ」というGoogle様の眼光は日に日に鋭くなってきているので、テロップなんておまじない程度のものでしょう。

「じゃあ何故にあんたはフルテロップにしてんのよ」と問われれば、私の答えはこうです。

 

「なんか、観てて楽じゃない?」

 

生憎、私の動画をご覧になっている方の様子を背後から見つめる機会に恵まれなかったため自論に過ぎませんが、音声とテロップを同時に追うことで、内容がより頭に入りやすくなるんじゃないかと思っていましてね。
情報の取り入れ口が視覚・聴覚に分散されると、どちらか一方に集中しているときよりも神経的な負荷が軽減されるようなそうでもないような(鬼憶測)。

私は文章でも動画でも、目を通している最中に「ん?今なんて言ったんだろう?」「それってどういうこと?」という場面に3回以上出くわすと、「もういいや」と半ば投げやりになっては全情報をシャットダウンしてしまいます。
私ほど極端な方はいらっしゃらないかと思いますが、「よく分からないけど、どんどん進んでいく」という状況がもたらすストレスは、そこまで珍しいものではないでしょう。
一瞬一瞬のストレスは微量であっても、同じコンテンツのなかでそれが何度も起こると、チリツモで集中力がガクッと落ちてしまう人。結構いるんじゃないですか?そうでもないの?まじ?

「音が出せない環境にいるアナタのため」
「視聴維持率を高めて認知を得たいワタシのため」
win-winで素晴らしい。

ただ、私の場合は「自分がそうだから」という理由で、きっと同族ではないであろう画面越しの兄さん姉さんにフルテロップを押し付けているだけ。

「できるだけ、すんなりとたのしく、内容が入ればいいな」

それだけを思うからこそ、テロップを正すか正さないかで悩み続けてしまうのです。

先程例にあげた「~してる」「~している」の様な一文字入るか入らないか程度であれば大差はありませんが、話した内容を要約してテロップに起こすときなんかは超悩ましいんですよね。
「耳で聞いている言葉と表示されている文字が違う」というストレスも少なからずあるんじゃないかなーと。
「テロップを読んでいる人は全員音を出していない。絶対ニダ!」というのであれば、こんなにも悩む必要はないのですが、「どちらも同時に楽しまれている方が多いはずだ」と思っている私にとっては、どちらかを完全に切り捨てることがそう簡単ではないのです。

「じゃあ話し言葉をそのまま文字に起こしたら良いのでは?」ごごごもっとも。
私もそう思って、初期の頃は一字一句余すことなくテロップに起こしていたのですが、実際にやってみるとこれがまぁ変なんですよね。
ラフになり過ぎてしまうというか、見ようによっちゃ幼稚というか。

この程度のことで右往左往する私ですから、動画を作るうえで悩ましく思うことは他にも山ほど存在します。
その点、既にマニュアルのある案件のご依頼は、この手の細々々々した問題にぶつかることがないので、ある意味では気が楽だったりするんですよね。
もちろん代償として大きな責任が伴いますが、それは個人のチャンネルでも抱え続けているものなので、特別負担には感じません。
つまり、今回の記事を通して私が何を伝えたいかというと、「お仕事ください」ということです(急転直下)。

チャンスはイマダ。
略歴など、詳細のツイートをドーン。

拡散に協力してくださった皆様のおかげで、ご依頼も少しずついただいてはいるのですが、個人名義の、それも新事業の営業ともなると、現実はとびきり厳しいものです。
とはいえ、それすら楽しめなければ生きていく道はないので、私も引き続き攻め攻めの姿勢で取り組んでまいります。応援してね。

ということで、今回は「シテルの?シテイルの?論争」を繰り広げてみました。
一人カラオケ・一人焼肉を上回る羞恥の遊戯、一人論争。
自分に対して素直に白旗をあげられるようになるには、まだまだ時間が掛かりそうです。
みなさんも自分と戦うときは素手にしておきましょうね。
それでは、またここでお会いしましょう。良い夜をー。