わたくしごと

守秘義務の守備範囲

ライティング・デザイン・動画編集などなど。
クリエイター職を副業に、更にはフリーランスとして活躍することを望まれている方が増え続けているようで、SNS上では個々の学習状況・知識の共有が今日も盛んに行われています。
先人の実体験に基づいたノウハウがリアルタイムで飛び交い、知恵に飢えた者がすかさずそれに手を伸ばす。
かくいう私も、これまで個人でひっそりやってきた動画編集のお仕事をオープンにお受けするようになったばかりなので、同業の方々のツイートを眺める時間が増えてきました。
大人になってから自発的に目標を立てて挑む勉強というのは、とても楽しいものです。
寂しき独学であっても、ネット上には同じ志を持つ人がいすぎるほどにいます。なんと心強い。
ただ、その世界(界隈)ばかり注視していると、「共有依存」とも言えそうな一種の同調圧力を感じてしまうことも多々あるので、あまり入り込み過ぎないように気を付けています。

そんな、世にも忙しない共有社会に根付いた「とある風習」
私はこれになかなかの違和を覚えている、ということをお話したいのです。
例によって、いつもの自論風戯言ですが、ご興味があればちょっと聞いていってくださいまし。カウンター席にはコンセントもございますのでね。

私が思わずヌヌッと眉をひそめてしまう初学者クリエイター特有の集団心理。
それは、若干過剰にも思える「案件の獲得報告」に由来するものです。
もしこの時点で、「あああああーなんか言わんとしてることが分かるかもしれん」とおっしゃる方がいるのなら、来世のお友達候補。
どうか100年後まで私のことを忘れずにいてください。

さて、この「案件獲得ツイート」というのは、その名の通り「営業に成功して、仕事の案件を勝ち取ったぞ」とTwitter上で声高にアピールする行為を指します。
豊富な実績を有する方であれば話は別ですが、一端のクリエイターを目指して勉強をされている方にとって、初めての案件を獲得できたときの喜びたるや相当なもの。
そして、その喜びの大きさは自身が抱えてきた不安の大きさに比例します。
一日会社で働いていれば得られたはずの2万円よりも、個人で稼いだ3000円の方が余程感動的に思えたりするので、「人ってのはつくづくバグった生き物だ」と思わされます。

はじめてのあんけん。
たまらなくうれしい。
ただ、それを重々理解したうえでも、「それは良かったですね」とは素直に思えないタイプの言動に出くわすことがあります。
今から始まる数千字のボヤきに先立ち、「細かくてまじごめん」と謝っておいた方がいい気もしますが、来月は私の誕生月なので、ここは強気にまいります。

 

「初案件が取れた。感謝の気持ちをきちんと形にしよう!」
「継続案件がもらえた。もっとクライアントに喜んでもらえるように努力しよう!」

 

これらのツイートは、本当に素晴らしいと思います。
きっと先方が望む以上の結果を出そうと尽力されるんだろうなぁと。
対して、私が問題に思っているツイートは、この手のものです。

 

「高単価案件を取りました!!!」

 

……

「ありふれた」と言っても差し支えないほど、Twitter上では頻繁に目にするツイートなので、慣れ親しんでいる方には、「え?別に普通じゃね?さっきのと何が違うの?」と思われてしまうかもしれません。
ただ、こういった発言に触れるたび、私はどうしても思ってしまうのです。
「クライアントに対して、ちょっと失礼じゃない?」と。
「舞い上がるには、タイミングが早すぎるんじゃない?」と。
「クライアントにとって、そこはまだ何のゴールでもないのに」とも。

その金額に見合うだけの成果を出せるかどうかも曖昧なうちに、まるでゴールが決まったかのような声量で「取ったどー!!!」と叫ぶ姿を見せられては、「自分本位な人」という印象を覚えてしまうのも無理はありません。
言葉は悪いですが、仕事相手を金(数字)として勘定している様が開けっぴろげになり過ぎているようなね。
クライアントに知られているアカウントでそれをしているのであれば尚のこと危険。
現にSNSのアカウントを尋ねてこられる方もいらっしゃいますし、なんならTwitterで直接仕事を取るのも当たり前な世界ですからね。

実際に自分ごととして考えてみると分かりやすいと思うんです。
例えば、あなたが会社の決裁権を持っていたとしましょう。
せかせかと仕事をこなしている最中、けたたましく電話が鳴り、取ってみると相手は企業の営業マン。
忙しいのですぐに切ろうとしたあなたでしたが、案内されたサービスの内容と担当者の柔和な人柄に惹かれ、その場で契約を決心します。
最後までストレスフリーでエスコートしてくれた彼に感心しながら、満面の笑みで電話を切ろうとした……そのときッ!!
まだ受話器を置き切っていない相手方から、「よっしゃー!!高単価の契約とれましたーー!!」というシャウトが聞こえてきたら……どうです?不快ですよね?え、そうでもないの?私だけ?また?

 

わたしだけじゃないわたしだけじゃない(暗示)

 

「クライアントとワーカーは対等な立場だ。過度にヘイコラするな!」と指南される先人も多くいますが、少なくとも私にとってお仕事をくださったクライアントは、自分よりも遥か頭上に君臨する存在です。
いわゆる根っからの「奴隷根性」ってやつですね。
このスタンスで生き続けてきたからこそ、高単価ヒャッホー族の舞に快く参加できずにいるのでしょう。

思えば、違う畑の編集者として、フリーのライターさんにお仕事を外注していたときにも似たようなことを言っていた気がします。
契約上の「機密保持」がカバーする範疇ではなかったとしても、業務上のやりとりや案件の内容をリアルタイムで口外されて良い気分になる人間などいませんから。
それが例えガウスブラー70に相当するボカし具合であったとしてもだ。おのれ。

アイキャッチ画像(ブラー70)

とはいえだ。
なかにはそういったツイートを見て、「おーおー喜んじゃってまぁー」といった具合に緩く見守ってくださるタイプのクライアントもいるかもしれないので、一概には言えませんね。

結論出ました。
「一概には言えない」
一行で済んじまった。

 

というわけで、今日は「その歓喜、時期尚早!」という話にお付き合いいただきました。
願わくば、クライアントサイドのご意見も聞いてみたいですね。
私が全部間違えている可能性も大いにありますから。
あーやんなっちゃう。たまには共感されたいわぁーそれではまたー。

去り際の説をひとつ